たった一人のこの部屋で/梅昆布茶
 
を囲んで微笑んでいる

零落した地主であったらしい母の実家にも いまは亡きバイオリニストであり化学者でもあった叔父の 税理士であったその兄の 生涯独身をとおした叔母の 気配をいまも感じる

商家であった父の実家で母と父は縁をもったらしいが すべては霞のように遠い
その遠景のなかに 僕と妻と三人の子供が重なる

三人ともに分娩に立ち会った なんだか血みどろの肉塊が ほぎゃーとこの世の第一声を発する
一人ひとり産まれた時から 見目かたちは違うもんなんだなあって思ったものだ

長男は僕に似ている おっとりして不器用でちょっと神経質だ
次男はけっこう天衣無縫 母親似かもしれない 発想
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