たった一人のこの部屋で/梅昆布茶
 
発想が豊かな子だ
三男も僕に似ている なんだかいるんだかいないんだかわからないんだけれど
自分の好きなことを 物静かにやっているようだ

いつか僕も誰かの遠景になるのだろう せめてあまり邪魔にならない遠景であって欲しいのだが

風は時代を引き継いでゆく それは自然な摂理だ 誰も抗えないもの
時は蓄積された記憶を いつか風化させ 拡散する

家族の記憶も いつか古びて いつか自分は離脱してゆく
もうすでに 僕の記憶は 子供達にとってずいぶん薄くなっているはずだ

それでいいとも思う 僕は宇宙に還る いつか星屑に戻りたかった
それも遠くないいま それでも家族を想っている

たった一人のこの部屋で





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