世界からわたしが消えたら/伊織
 
くせに!
級友は言った
 死ねないくせに!

そう 私は死ねなかった
ビルに登れば警備員に見つかり
首を吊ろうとすればロープの細さからくる痛みに耐えきれず
富士の樹海に行く金もなく
手首の傷の数だけ増えていった
世間はそれを根性なしと言う
そんなことにはもう気づいていた


義務教育が終わると同時に
全寮制の高校へ特待生で入学した
驚くべきことに
誰もが私を人間扱いした
まだ耐性のない私はまともに挨拶一つ出来なかったが
少なくとも取り急ぎ死ぬ必要はなくなった

それでも教育というのは恐ろしいもので
やはり自分が存在することへの罪悪感は消えることがなかった
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