世界からわたしが消えたら/伊織
 

「生きてていいに決まってるじゃん!」
その言葉を心から信じるのはとても困難だった
私は手首の傷で友達とやらの忠誠心を試し
そのうち誰もいなくなった


どこに行けばいいのか分からないから大学に行ってみた
誰かと関わる義務のないことの心地よさよ!
授業には出ずに毎日気の向くままに街を歩いていた


ある日 私は拾われた
 君が、必要だ
その人はそう言って私を持ち帰った
それから
鍵をかけて
檻に閉じ込めた

求められてるならそれでもいい
そう思ってた
飽きて棄てられる方がずっと怖かった
そのうち
生きている私と理想の私にずれが出てくると
その人は何度も私を殴った
壊れたテレビを直すときのように


前よりもずっと壊れて
私は白いベッドの上だった
もう
誰も何も言わなかった


世界からわたしが消えたら
悲しむ人はいないだろう
ただ
このベッドが一つ空くだけ
戻る   Point(8)