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へ行くように、これらのものどももおそらくは違うところへ行くのだろうが、写真と比べてみるとなんてことはなくて、はじめからなにもなかったのだから陸地になろうと海になろうと変わりは感じられないのだけど、それでも家々の甍の痕跡が見え隠れするような不穏さを忍ばせて海はある。何人かの人が水平線をぼんやり見てから去っていくのが、背中越しからでも感じられた。ぼくの足元に寝転がる蜻蛉には目線を合わせることもなく、港の気配のするほうへ向かっていく。おそらく、港では、売笑婦の声が交わされ始めて、欠伸交じりの嬌声が響こうとするだろう。体臭のきつい男の掌が、少女の頭を撫でるのと同じように、乳房の両端を抓り上げるだろう。ちょ
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