恋を抱きしめよう/梅昆布茶
くぐもった音楽とバイクと太宰治だけがそれまでの僕の人生だったのかもしれない
白煙を残して直線的に加速する2ストロークの情熱的なエンジンが僕の恋人だった
誰も追いつけなかった
渋谷道玄坂にあったSUVというROCK喫茶が
ガロのマークさんに良く似たマスターのいる
地下の穴倉のなかで轟音のような音楽を聞いていたが
それがそれまでの最高の時間だった
ロッカーでもないのにね
かつて仲間と安酒を飲んで議論した高田馬場の居酒屋に
35年振りぐらいに詩人の仲間とゆく
時間が解けてまた僕に近寄ってきて微笑んだ
そうあの時間は今でも生き
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