ギター弾きの想い人/まーつん
 
  手近な窓を叩き割り
  新鮮な空気を吸いこんで 
  酒で喉を潤したあとに
  高いシャンデリアの
  儚き輝きを見上げつつ 
  栄枯盛衰のバラードを
  口ずさむような

  例えばの話

  道に迷った山奥で
  牙をむいて取り囲む
  狼たちを前にして
  月明かりの下
  濡れた草の上に座り込み
  立ち込める霧の奥から
  探り当てた旋律で
  餓えた野獣の唸りを
  安らかに静めて
  夢の微睡みに誘い込み
  立ち上る寝息の数々を尻目に
  そっと足音を忍ばせ 
  茂みの向こうへと
  逃げ延びていくような

  そんな どこ
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