小さな音だけがはっきりと聞こえている/ホロウ・シカエルボク
 
、どっちかに決めなきゃいけないっていうその態度さ、そんなものにはどんな意味も存在しないんだ、枕に頭をはめ込んで夢の中に現れた虫を出来る限り踏み潰した、やつらは指についてきた脳漿みたいにどろりとなってぬるぬると消えて行った、そうしたのはたぶんある種のこだわりを捨てたからだ、なにも居なくなった床の上に寝転んで夢の中で夢を見た、その夢のことはいまでは思い出せない、だけどなにか地面を舐めるようにうつ伏せで浮遊していた、そのことだけははっきりと覚えている


目がさえて眠れなくなったので明りをつけずに風呂に入った、薄暗い真夜中の風呂だ
髪を洗おうが身体を洗おうが性器を洗おうがそれはそれだと思えなかっ
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