小さな音だけがはっきりと聞こえている/ホロウ・シカエルボク
るものなのかおれは知らない
もしもその歌がおれにだけ聞こえてくるようなものなら余計に知りようがない
狂人の歌は綺麗だと昔は考えていた、きっと
おれたちのようなものよりも純粋さに満ちていると
だけどそんなものは間違いなんだ、といまは思う
狂ったパーツを旋律にはめ込んでこそを歌と呼ぶのだから
寝床に染み込んだ消化出来ないままの夢の地層、一度踏み込んだらひどく咽こんだ、だからいまではそのままにしてある、理由なんかいるのかい、人間なんて愚かなものだぜ、生きる術がもうないのなら生きることなど考えずに生きりゃあいい、古い家屋に染みついた雨の軌道のように人生は続いていく、問題なのは、そう、ど
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