小さな音だけがはっきりと聞こえている/ホロウ・シカエルボク
はそうは思わない、それは膿んでいるだけ、気付けないほどの奥底で、腫瘍のように膿んでいるだけ
「幸せをやたらと語るのはそれがなんだか少しも判っちゃいないからだ」
真夜中のメモにそうとだけ書いた
窓の外から眺めていた死神が鼻で笑って去ってった
脳味噌の中に手を突っ込んでぐちゃぐちゃにかき回して引っこ抜いた手に
こびりついてくるべとべとの脳漿をおれは詩と呼ぶんだ
ひたひたと床に落ちるそいつらの足音を
鼻孔にすっと差し込まれる細く長い針のような臭いを
空は雨の予感に顔を曇らせている、気が触れた女の歌が河原から聞こえてくる、この時間になるといつも
その女がいったいどこで生きているも
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