童話 旅のうさぎ/光冨郁也
一息ついてから、森へ向けて自転車を走らせます。夕焼けが紺色の空を赤く染めていました。
「ちょっと寒いや」
そうひとりごとをもらしながら、ざわめく森の中へ入っていきました。
うさぎは夜の森に怖さをおぼえました。ペダルをこぐ足に力が入ります。さびしさが背中におぶさっているようでした。
うさぎは森はずれの丘にたどりつきました。夜になり、月が出ています。自転車をとめ、荷物をおろしました。
ふいに強い風が吹きました。帽子が飛ばされ、遠くまで転がっていきます。うさぎは自転車で追いかけました。
帽子を丘はずれでつかまえました。自転車を降り、帽子をリュックにいれました。目の前
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)