童話 旅のうさぎ/光冨郁也
の前を見ると、下のほうに町の明かりが星のようにひろがっています。空を見上げても、町を見下ろしても、そこにはたくさんの光がありました。
うさぎはとても幸福な気分になって、夜おそくまで丘に立っていました。
朝になり、小鳥がさえずります。
「やあ」
とうさぎは小鳥に声をかけます。
寝袋を自転車の後ろにくくりつけ、うさぎは海に向けて出発しました。
草原がつづきます。次の標識を探しました。地図と方位磁石で場所を確かめます。
昼になりました。うさぎは自転車から降り、にんじんとパンの食事をとりました。鼻を動かして、風の匂いをかぎます。潮の香りがかすかにしました。
うさぎはまた自転車を走らせました。
「この先、海」という標識を見つけました。太陽はかたむき、波の音がします。草原のかなたに青い海を見つけました。
うさぎは「海」の標識をまたいで、砂浜まで走り出しました。足が砂でうまります。波が足元まできています。うしろで自転車が音もなく倒れました。
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