蒼い思考 デッサン/前田ふむふむ
 
は冷たい息を弱く吐いて うすく開いた眼は 遠く来歴をみているようだった 路上で寝る 女を見るのは はじめてだった 未知の感覚を 母に話したら 不幸を呼びこむから やめなさいと諭された 拒否した母の声から 少女のような女が流れている 柔らかな乳液のように

雨が降ってきた
冬空がざわついている
こんなとき わたしの安閑を
破って それはやってくる
わたしはいつから薄光に揺れる塔を
意識しはじめたのだろうか
場所は全くわからないのだ
それは存在として
高くいつまでもあった
あの塔について考えることが 
わたしの命題として
いつも手の汗のなかに 狭い眼窩のなかに
あって その
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