風のなかの詩人たち/石川和広
を愛する人もなし
骨は骨として 勲章をもらい/高く崇められ ほまれは高し
なれど 骨はききたかった/絶大な愛情のひびきをききたかった
がらがらどんどんと事務と常識が流れ/故国は発展にいそがしかった
女は 化粧にいそがしかった
ああ 戦死やあわれ/兵隊の死ぬるや あわれ
こらえきれないさびしさや
国のため/大君のため
死んでしまうや/その心や
彼は三重の出身で、23で戦死している。出兵の前日、チャイコフスキーの「悲愴」
を聞き、部屋にこもっていたそうだ。
この詩には天皇が「大君」という古い言葉で、あらわれてくる。抵抗のある方も多いと思うが、当時の兵士
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