砂の民/そらの珊瑚
 
いた
その一冊の本の価値を
価値というものは腐敗もし 熟成もする
綴じ紐をほどかれた本は解体され 一枚の紙に戻る
黒いインクはやがて蒸発し
砂とともに 新たな価値が付加されてゆくのだ
砂の民は こぞってそれは素晴らしいサンドペーパーになるであろうと確信し、それで納得し 進路を変えた

この世に磨き足りないところはまだまだある
それが砂の民のいいぶんだった

翌日はすばらしく晴れて、3.0の視力を持つミス ドリアンによっても雲ひとつさえみつからないであろうと思われる青い 青い空だった

実はそれはサンドぺーパーたちの仕事の成果だったのだが
それを知るものは少ない
そして
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