火の断章/安部行人
正確に言えば
ここは駅でさえないのだ、
ここで停まるのは満載の貨車と空の貨車だけで
人間はひとりも見ることができない。
おれは鉄骨につながれた時刻表を見あげるが
錆びついた数字は
ありえない時刻を示している。
いつの間にか
1日は24時間ではなくなったらしい。
∴
夢を見ない眠りとともに
おれは都市へと舞い戻った。
通り過ぎたものを想うこともなく
現在から現在への痙攣で呼吸する
>あなたの感情のうちに
>引用符のない行はあるか
問いかけは常に予期せず実行され
その度におれは確認するのだ、
すべては引用であるこ
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