火の断章/安部行人
 
ることを。



   ∴



ふたたび歩く――
暗い地下の路、草におおわれた舗装道、傾いでしまった鉄橋を越えて
ふたたび原野へ。


揺れている、
炭化した原野のうえでいくつもの火が
だがもはや何が燃えているというのか、
いったいどのようなものが燃えることがあるのか、
この原野で、
いま何が果たして。


ふたたび歩く、
火の群れのあいだを揺れながら、
焼かれた空気のなかを。


燃えている――目に見えるすべて――
燃えている、おれの眼が、
すべてを捉えて燃え――
やがて静かに消える。
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