ふるさとを滅ぼされた難民、、、言葉の生まれる原風景へ(批評祭参加作)/石川和広
 
、宇野千代によると、急にいなくなったりするが、けして内心を明かしたことがなくいつも飄々としていたらしい、大阪の人なので、
上方の上品さを持っていた人だと感じた。やはり、そんな減らず口が好きではないし、恥ずかしいのだ。
文学者にしては、体のがっしりした梶井は、結核の第3期に入っても、宇野には、元気に見えたらしい。というか、そこをださないのが、何らかの狂うほどの熱さを感じる。
実際、大阪で再会した梶井は、宇野に
「僕が死ぬとき、手を握ってくれますか?」といったそうだ。
僕は、宇野に恋心をうちあけず、気丈に彼女の前で振舞ったところに、宇野は後年済まない気持ちになったといったそうだが、彼の詩があ
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