ふるさとを滅ぼされた難民、、、言葉の生まれる原風景へ(批評祭参加作)/石川和広
そこには、放浪の民とも言え、検地の側、戸籍の側、国体の側からすると、住所不定のもの、というか、居所不定の難民めいたものが、選び取らなければならないので、というか、履歴書が
書けないものとして、現実との不定感、精神医学では境界例ともいい得る人間が、根拠とする孤独の原風景を書いてきたものが、これまでの詩人といえよう。
現実の位置する場所に、来歴の不明を対置することがどういうことになっていくかわからない。
僕は、その当時、梶井基次郎と、花田清輝が好きだった。いまも敬愛しているが、少し遠くなっている。
梶井は、詩でも散文とも呼べる不思議な規格外の書き手だ。ひどい躁鬱病と結核に苦しんでいたが、宇
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