銀塩写真/そらの珊瑚
 
は毒であったのだけれど、奇妙なその匂いがなぜか嫌いではなく、友達が秘密基地と名付けた秘密でもなんでもない空き地へ、渋柿しか実らせないという古いポリシーを持つ岩のような肌をした柿の木の下にしつらえたダンボールで作ったおそまつな隠れ家で飼っていた捨て猫、冷酷な祖母は目の開かないうちに川にうっちゃってこいと言い放ったが、たぶんその時人を憎むということを生まれて初めて体験したのかもしれず、そのくせ反発する言葉さえ持たず、まさかそれを実行できるはずもなく(時に名前をつけずに「猫ちゃん」と呼んでいたのは、冬生まれの宿命である短いノラの命を予感していたわけではないけれど、飼い猫に出来ないという大人の道理を受け入
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