シノハネ/平井容子
 

きっと
身体はいつだって生臭いもの
いくらリストアップしても足りないもの
それなら数えなくてもいい
分解すればいつだって
予想より多くなれる
それでいていつも
ひとつ足りないままでいられる
きっと

?いだらいいのにそっとして
咳のおくで差しだしてひったたかれる
まぶたに引いた飛行機雲が
胸の頤をねぶってひらく
ともなわないで
歯が砕け散る夢を見たら電話する
確率ですべてが無にかえる
「切る」
「貫く」
「ひっぱたいて」
「身にまとう」
耳を失ったら
音が聴けるようになる
果物が腐る声を
羽に八重歯が食い込む声を
まばたき
一瞬だけ瞼がかみあっ
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