シノハネ/平井容子
あって
そしてまたほどける
その間に
いくつかの
視神経の
詞と
視と
私と
賭して
通して
透して
粘膜で吸う
まどろみの音を
唇から放つことも許される
許されたくて吐きそう
くぼんだてのひらに愛を溜めて
地面を這う白い黒蟻が
足を伝って頭から抜けていく
顔のない恋人たちが町中で倒れている
全焼しちゃったおうちのなかで
おかあさんがドーナツに水をやる
おとうさんは眠っている
おにいちゃんがセックスしている
わたしたちは二人ぼっちで
なにかとても些細な骨が
のどのおくに刺さっていることを自覚した
それっきり
どこにも帰れなくなった
盗
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