一服/HAL
 
ゆっくりと列車が動きだした
この列車に乗るのはこれ1回限り

明確に行く先は知らないけれど
到着駅が近づいたときに

列車は分岐器で方向を変え
そのときにどの駅が到着駅かが

推測でしかないけれど
高い確率で分かってくる

右が何処に着くのか左が何処に着くのか
もちろん知らされる車内アナウンスもない

車窓に眼を遣ると見えるものは
産まれたばかりのぼくであり

すぐに車窓からは高速度撮影の様に
ぼくの青春が朱夏が白秋がそして玄冬が見えた

車窓から見える風景はそこで終わり
まるで列車がトンネルに入ったかの様に

車窓はずっと夜の様な風景がつづく

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