object/水町綜助
が豊かだなんて誰の口から発せられたのか?
だから、馴染んでいるから
この水の満たされた水槽の中での
体温のわずかな違いが
はっきりと感じられるのだ
その摂氏一度、何分の差は
どれだけ冷や水をあびせても
どれだけ火をくべても
埋まることはなく
身体を捨てても
尾を引いてまた水に濡れる
死んで落ちた春の雨しずくの
輪郭が保てないあの
張力のない水に
馴染んでしまい
馴染んでしまうのに
咲くことはない
いくつものタームが
もう、身に染みてしまっている
*
がらんがらんと
つり鐘はならされ
頭上に広がった余白を気付かせた
*
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