object/水町綜助
一匹の
猫
晴天の下で抱かれた
鳴き声は高らかに
高らかに三階から
天井の空を見上げるように
しろいのどもとを晒し
水溜まりのように
春の青に溶け込んで
もう行き先がわからなくて
遥か、という言葉が
身に
つまされるように
一匹の
猫
晴天の下で
いだかれた
その鳴き声は
高らかに
高らかに
三階から
天井の空を
見上げるように
しろい
のどもとを
さらし
水溜まりの
ように
春の青に
溶け込んで
不意に
ふりだした
雨を受けて
ちょうどこの
得たいのしれない
暴風の空を
連続写真の
雲が
北から
南へ
胸さわぎのような
はやさで
ながれるさまを
ただ口をあけて
ぼたぼたと
雨を飲むような
気持ち
のどが、乾いている
夏
もう
いくつかすぎると
やってくる
どうしようもない
温度で
摂氏一度、
何分を
溶かして
肌のきめに
塗り込めて
こがして
忘れる
時間にかわり
遥か、
ということが
身につまされるように
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