past away/mizunomadoka
 

「ねえ、今日はここでバイバイしよ」
「一人になりたい?」
「ひとりで歩いてみたい」
「わかった。人ごみの中を歩くんじゃよ」
「うん、ありがと」
「気をつけてな」
「帰ったらメールするね」
「わかった」
「ばいばい」
「バイバイ」

去年の花火のことを思った
隣にいたひとのこと

打ち上げの真下での花火だった
シートに寝ころんでバックを枕にして、横に並んで
打ち上げを待った

空全部が花火だった
初めてだった
思わず右手をのばした
ためらって、あきらめた
それから一年がすぎた

幸せそうに歩くひとたちのなかで
自分のことを恥ずかしいと思った

[次のページ]
戻る   Point(1)