無情/砂木
 
の人のいる気配がする
流される私と一緒に 川岸を走って
助けを求めて叫んでくれた友達に気づき
近所の大人の男性が 助けてくれたのだった

ランドセルも教科書も ふやけてしまい
ランドセルは 別のものと取り替えたが
教科書は 学年が変わるまでだしと そのまま使った
親にも怒られて それでも不思議と
恐怖は感じなかった 多分 感じたくなかった
桑の実が切られて 片付けられてしまった
その方がショックだった 私のせいだった

溺れた事は ひきずっていないつもりだったが
震災の津波の映像をみるたびに
いえ本当は水の事故のニュースを聞くたびに
幾度も幾度も思い出している

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