無情/砂木
汚らしい水の中と 届かなかった草と
それでも普通に広がっていた青空と
いいから 泳げ 泳げるはずだ
小学五年の時の担任の先生は プールのてすりで
バタ足ばかりで泳がない私に怒鳴った
温厚な先生だったが すごい剣幕で
泳げないはずがないと 私を含めた三名を
浮き輪なしで とにかく泳げと言った
半泣きしつつ できるわけがないと思いつつ
怒られた恐さに水の中に身体を投げ出す
じたばたして 身体は沈んでいく
それでも先生は許さなかった
五度 六度と 他の生徒は休憩させて
泳げない三名に 集中して教えた
何度目か ばたばたと手足を動かすと
少し前に進んだ
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