ゼブラの思い出/salco
 
酒乱のゼブラは
いつも酩酊で店に来た
五十五歳
痩身で長身、顔は土気色
ギトギトの黒髪と銀ぶち眼鏡
三白眼が据わっている

「やらせなさい」
「無礼者、下がれ!」
初めて怒鳴られた時にはびっくりして
化粧室で泣いているとママが
あの人はいつも、誰にでもああなのよ
ほんと困っちゃうわ、ごめんなさいね
と慰めてくれた
出入り禁止にはしないのだ
お客達も慣れたもので
胴間声を不快がる素振りもない
目に余れば当人にお帰り頂くまでだった

ゼブラはとあるボールペン会社の常務で
この酒ぐせの為に出世がストップしたらしい
会社に多大なる貢献をして来
部下にも見限られた
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