空の子ハイヒールは海に溶けぬ/ayano
ことももちろん知らなかった。蛇足だが、彼女の初潮が近いらしい辜月の昼下がりのことだった。
男と娘
この娘には母親という存在がなかった。死別だった。あいつが死んだ途端にあいつと瓜二つの女児がやってきた。おれはこの娘の父親にはなれない。あいつの葬式の間中あいつを抱き抱えるような感覚に吐き気を覚えた。死んでいない今まだ始まったばかりのこの娘に死への扉からのぞく光を見せようというのか。それはあまりに酷く、泣き止む術さえ知らぬ子を黙らせるために必要なすべてを失っていた。砂浜と混ぜた骨はきらきらしていた。
渡り鳥がおまえを運んできたんだ。雲の上に住むおまえをここに連れてくるように
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