空の子ハイヒールは海に溶けぬ/ayano
うにおれが頼んだんだ。かわいそうな愛しい空の子。すきなだけ泣けばいい。そして泣いたあとのご飯のおいしさを知りなさい。熱いのどに何かがつまる感覚も覚えていなさい。おれは少しずつ強くなっていくだろうおまえに少しずつ嘘を教えていった。
彼女と海にきた。作ってやったハイヒールを履いてふらふらと歩くのを後ろから見ていた。何度か四足歩行をしていた。おれは、わざと砂浜に埋まるあいつを踏んだ。雲がおれを見つけたから。逃げられない。途端にあいつはおれのあしに飛びつきあしを毟りとった。刎ね飛ぶそれ、あふれる血肉、染まるハイヒール。裾を引っ張る女がふたり。
死ぬ前の記憶
あいつを抱くみたい
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