月に/ねなぎ
の本の話だったろう
本の話になり
突然
家に来ると言い出した彼女を
止める事が出来ずに
俺も行くとの声が
仰向けになった辺りの腕越しに
聞こえたけど
あんたは寝てなさいとか
言い争って
あの頃の月は
暗い中に浮かんで
僕は
あの頃の月を
見ていたろうか
見つめる視線に
合わせる事も出来なくて
俯いたままで
顔も上げられず
ビール缶の向こうが
煙ってボヤけて
あの頃の人々の
顔も浮かばずに
初めて人を上げた家で
僕は固まっていて
散らかった部屋が嫌で
電気はスタンドの電気で
その事を謝って
狭い事を謝って
腰掛ける場所は
ベ
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