むなしいのさこの世界は結局/青木龍一郎
 
やっても前に進めない

漕ぐのをやめてしまったボートは
永遠に湖面を漂い続けるだろう
向かい合って座った僕たちの会話も
永遠に弾まないだろう
池の中の鯉は一生エサをもらえないまま
静かに死んでいくだろう

水面に陣取る白鳥たちも
水中の中にいる誰かに足をおさえられているから
永遠に飛び立つことはないだろう

全てが固まってしまった光景を前に
僕たちはどうやって心を躍らせれば良いのだろう

絶え間だらけの会話の隅々にカビが生えている
跳ね返った水からきらめきが失われている


この間の町内会で誰一人笑わなかったのは
この町に何も面白いものが無いからだろう

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