1872年 足の裏/長押 新
には、誰もが有無を言わない。気付かないうちに、ワインを隠し持っている少年には、心裡留保も有り、だ。太陽はそれさえ見越していたのだろう、段々と和解に落ち合い、心(ここ)に融合する。
そのようにして、たちまち夜が現れるのだった。騒がしい星と風のない黒。黒は夜だ。夜は黒だ。財布の匂いに似た鰐がぺろりと口をあけ少年のビニール製の右脚を食いちぎった。
あぁ痛い!
歓喜が喚起をとらえ逃がさないぞと追いかけた。左脚はまだ震えている。少年は右脚のあった部分におまじないのように月が明る過ぎると星は見えない、と、言い聞かせスムウズに駆けた。腹を抱える鰐のざらざらとした消しゴムの笑い声。少年と鰐はただ見つめ合った
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