その立体はわたしたちの団地を支配していた/リンネ
 
それはひどく広い空に浮かんでいた。太陽はいつでも立体を見下ろしていた。太陽にとって立体とはとるにたらない汚れに過ぎなかった。しかし立体はといえば、立体はこの団地を、この団地の住民たちを見下ろしていた。そして立体にとって、それらはとるにたらない汚れに過ぎなかった。立体はそれほど完ぺきだった。それですでに団地内には、ぽんこつの彼らの入り込む余地など少しもなかった。それはぞっとするほどの完ぺきさだった。たったひとつの窓すら開かれていなかった。どのドアにもしっかり鍵がしまっていた。おのおののドアはすべてちがう鍵によって開かれるのを拒んでいた。それでいてどのドアも見た目は同じだった。同じものでつくられていた
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