その立体はわたしたちの団地を支配していた/リンネ
てえことは、ありゃ、耳で見てるんだなあ。いや、とんでもない、あの耳でだよ、きみ。あの耳でわたしたちを見てんだ。それは気味悪いってもんよ。え、え、え? もし目があったところで、どうにもならないじゃないか。それで見るだけだよ。今度はじっと目で見るだけだよ。ともかく、わかったかい、彼らは目が見えないんだ、それなのに見えてるにはちがいないんだ。ほんとうに、わたしたちを見ているんだよ。あの耳で、いつもわたしたちを見ているにちがいないんだ。そりゃあぞっとするじゃないか、え?」
それは立体のはるか向こうで見下ろしていた。慈悲深い太陽、砂場にいる、ねじの曲がったぽんこつの彼らを見ている、慈悲深い太陽。それ
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