ぽっぷこおん/リンネ
 
にいた。一人だった。中学校の三階には、大量の昆虫標本が保存してある教室があって、積み重ねられたプラスチックケースがぶ厚い埃に覆われて眠っていた。わたしは一人だった。夕日が窓からこちらに、薄い光を落として、プラスチックの標本箱に反射していた。教室の向こうから、何かすべり寄ってくる。足元に散乱した蝿の死骸やポップコーンが踏みつけられて、沸騰石のようにきゅうきゅうと鳴りながら床にへばりつく。映画館にいた男女のいもむしだ。だが今度は、いもむしではなく、人間の格好をしている。二人は、素っ裸である。全身が青白い。皮膚から、じっとりとした光を放って。いもむしのぶ厚い体皮が裏返って足もとにつながってる。

 
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