ピーアイエヌケー/魚屋スイソ
穏やかで、高温で茹でられるどんな食物よりも蕭やかだった。飾らず、光らず、無表情に滾っている。水が沸騰する頃には、ほとんど体中が透き通ってしまっていた。全身を今にも敗れそうな膜にしていて、中の心臓や子宮や卵巣がゆっくり踊っているのが見える。フォークを握って乳首を突っつくと、半熟の黄身みたいなトロトロの液体が、上擦ったように酸っぱい色をしてドクドク出てきて、おれは彼女を破くことと、破かれた彼女を観察することに夢中になった。咥えていた煙草の灰が落ちたが気にしていられなかった。彼女は溺れながら、股の間に右手をやって、左手で破裂した乳房を支えながら熱湯の中で煩悶している。身をよじって震える度に、彼女の飛沫が
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