レシートと店員/長押 新
 
そう、と言ったけれど店員は、夜の暗いのが見えるうちに帰りたいと言って、鍵をしめた。仕舞い忘れた名札を隠すように握る。今夜はもうそのドアを開くことはできなくなってしまった。



三、
鍵は開いていた。パートタイムジョブの私は区切られた時間しか店の内側にいない。店員がどうやってドアを開けたかは分からない。考えてみると、鍵を閉めるところしかみたことがなかった。私は、万年筆を落とさないよう、慎重にいらっしゃいませを繰り返す。



四、
洋介君の愛を落としていたのかもしれない。万年筆を拾う時間があったのに、全く気がつかずにレジで商品をスキャンしていたんだ。一円ずつ足りないレジ金、それ
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