レシートと店員/長押 新
 


一、
君はすでにその時、落としていたんだよ、君の、愛ってやつを。店員は私の顔を覗き込んで、少しいらいらして言った。私と店員はごみ箱に落とした万年筆を、閉店後に探さなければならなかった。私の愛は洋介君のものだったし、店員の愛も愛ちゃんのものだった。だから、愛ははじめから落ちるはずがなかった。それもごみ箱なんかには、落とさない。ポケットに入っていたのは、飴やいらなくなったレシートだけだった。



二、
万年筆は三つ目のごみ箱から見つかった。広い店内は、非常口の緑に照らされている。店員は、自分の万年筆をどこかのごみ箱に落として、それは二つ目のごみ箱からも見つからなかった。私は探そう
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