木魚屋/魚屋スイソ
 
が溢れ、口の中がいっぱいになった。舌先を動かすと水晶体が歯茎と下唇の隙間でぬめった。空っぽの眼窩に中指を刺し入れ彼女の頭の中をまさぐる。グルグルの脳みそ、爪の間に挟まったネバネバのカスみたいなのを舐め取ってまた眼窩の穴を拡げる。涙骨は窮屈だったが指先を髄膜に食い込ませ、やわらかい部分を掴まえて引き摺り出した赤黒い脳みそに吸い付くと多幸感に満たされた。射精していた。まったくいい女だった。
 彼女の小さな胸を眺めながら、血が冷えて固まってくるまで、あまりに穏やな、色つきの水を凍らせたようなカラフルで圧倒的な時間がすり抜けていくのを全身で感じていた。ライブハウスのステージの上にいるときの感覚とも似てい
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