木魚屋/魚屋スイソ
 
ていたし、それとは全く対極にある気もした。水槽の向こう側を見るような心地だった。どっちが中でどっちが外かはもうどうでもよかった。ただガラスと水があってそこを透き通る光が屈折してさえいればよかった。
 仏壇を開くと木魚があった。ベースは折れてしまったしギターはもともと弦が足りていないので、いまのおれにはこれくらいしか弾ける楽器がなかった。凍えながら木魚を叩いた。彼女のつくった歌を叫びながら、もし、もし夜が明けたらここで木魚屋をやろうと思った。木魚屋の食虫植物ズだ。木魚を叩く度にカミソリが舞うような耳鳴りがした。フォークやナイフが耳から脳へ刺さる音がしている。これはエレキ木魚。アンプは彼女の子宮。繋いでいるのはおれの精子。屈折して透き通って、向こう側にも伝わる。
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