木魚屋/魚屋スイソ
割れていてそこからやわらかな湯気が立ち昇っているのが見えた。大根おろし器のようになっている手先を老店主の蒸気にかざして血を通わせた後、再び彼女を抱えギターを背負いベースを引き摺って店の中に入った。
菌類細菌類微生物だらけのにおいが店のコンクリートの床の上に沈殿してひしめいている。血の通ってない蛍光灯の下、何か食べる物は、と思ったが真ッ緑の水槽が幾つかビーと唸っているだけで魚らしい魚は見当たらない。側面を油絵の具で緑く塗りつぶしてあるかと思うほど藻のこびり付いた水槽の一つを覘き込むとシマシマの小さい魚がびっしり浮いていてワニの内臓のような悪臭が鼻を突いた。
ハハンここ魚屋で無しに熱帯魚の類を
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