木魚屋/魚屋スイソ
色のペンキで「魚屋ハッピーハッピー」と書いてあった。
シャッターを叩いた。四十回くらい叩いて音沙汰が無く、右肩に担いでいたベースを振り上げて、振り下ろしたら、シャッターに裂け目が走った。ネックを握り締める手のあかぎれの肉の中に回転ノコギリじみた砕氷が入り込んできていた。おれはがむしゃらに叫びながら何度もベースを振り下ろした。最初缶切りの要領で徐々に穴を拡げようとしていたのだが途中から歪み始めて綺麗な円にはならなくなったので無茶苦茶に振り回していたらシャッター以外のものに当たったらしくベースが折れ、おれはよろめいて雪の上に倒れた。
鼻水をすすって起き上がるとすぐ側で店主らしき老人の頭蓋が割れ
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