木魚屋/魚屋スイソ
 
さぶってみたが、ピンク色の泡立った唾液を口の端からこぼすだけで右の眼は相変わらず白いままだった。こりゃ死んじまったなとかこれからバンドどうしようかとかとりあえず明日のライブでは木魚使おうとか考えながら、半裸の彼女とギターとベースを背負ってライブハウスから地上へ出る暗い階段を上った。
 途中ふら付いて歯を折って、外に出ると吹雪で住んでいるアパートまで行くには電車に乗らなければいけなかったし駅までは遠かったしポケットには自分の歯と二百八十円しか入っていないしそもそも今が何時で終電が何時だったかもわからなかった。何より寒いのがいけなかった。
 路地に入ったがまだ寒かった。死んでいるのか死にかけている
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