魚眼プール/魚屋スイソ
サの染色体、凸レンズ、プロミネンス、オキシドールと二酸化マンガン。ベッドのスプリングが軋んだ。彼がこっちを見ている。額の汗で濡れた前髪の奥から、4Bとか6Bの鉛筆で塗りつぶしたような、光のない目が覗いている。喉が渇いた、と伝えると、彼はうつ伏せになってベッドの下に手を伸ばし、コンドームの口を解いて彼女へ投げた。セキツイ動物のなかま、と見出しのあるページの、魚の写真がこぼれた精液でまみれる。急にまた、扇風機や蝉や水の音が、うるさく、粘っこく彼女の裸へまとわりつき始めた。彼女は理科の教科書と、窓際に置いてあったコップを掴んで、浴室へと走った。彼は再生の止まったイアフォンを引っこ抜いて、開いた状態で伏せ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)