魚類、落つ/雨伽シオン
。その事実は、男が与えるどんな快感よりも私を昂ぶらせた。そう、これはセックスの悦楽ではない。鏡の前でオナニーをするような恥ずかしいよろこびだった。その頂に達したとたん、私は待ちわびていたカリソメの死へと突き落とされた。落下速度がぐんと上がって、ダルママグロになった私は、頭から真っ逆さまに落ちていく。上の方から注がれる視線は、もう一人の私のものだろう。彼女は頂にとどまったまま、落ちていく私を見ているのだ。溺れた人間が救助人を水中に引きずり込もうとするように、その足を掴んで一緒に落ちていけたら、きっと本物の死を迎えられるはずだ。しかし彼女の足を捕らえようとしたって、私の手はすでにない。あと何度カリソメ
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