魚類、落つ/雨伽シオン
かった。死んでいくところを見られるなんて、恥ずかしくて死にきれないに違いない。
私は鮟鱇でもなければ、俎上の鯉でもなくてマグロだった。恋だったらまだ救いようもあっただろうに、私はマグロだった。眺めて愛でるには不向きの、もっぱら食用のために捕獲される魚。今まさに部位ごとに切り分けられているのだ。解体作業をカタカナ四文字にするとセックスになるらしい。私にとってそれは愛を確かめ合う行為でも、快楽を享受するための行為でもなかった。
男の欲にまみれた指が私の精神を引き裂いていく。二つになった私の片割れは男に犯されていて、もう片方はその様を冷たい目で見ている。私は私を見ていて、私に見られているのだ。そ
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