テンオアラの嫁/リンネ
 
しかし、押し開けても押し開けても、じゃばらのように新しい扉が繋がり、一向に中へは入れない。むしろそうやってますます美術館に飲み込まれていく。とつぜん、耳鳴りがしたかと思えば、ちょうど手をかけた扉の隙間から白い髭を生やした聖職者の顔が浮かび上がる。それが何かをつぶやいたとたん、隊員は暗闇に吸い込まれるようにして消えてしまった。開かれた扉が今度は次から次へと閉じられていく。最後に聖職者が言う。「ここにいる、死……すると美術館の周りから誰一人残らず消える。わたしは夢が終わるまでひとり静かにどこかでたたずんでいるが、やはりその姿は見えない。」



ところで、わたしはようやく自分の住んでいる集合
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