テンオアラの嫁/リンネ
走っていく。
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いま気づいたのだが、自宅の前の通りで映画の撮影をしている。子役の女の子と男性俳優が手を繋いで歩いていく。その後ろから八百万の神さまたちがついて来ている。神々はげっぷのようなうめき声を吐いていて、それにより女の子と俳優の会話が聞こえないが、撮影は中断されることなく続けられている。「これで絶対に平和だ」と誰か言う。
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さて、わたしはこの巨大な美術館に立てこもっているはずだが、自分でも居場所が確認できない。外には何万人規模の集団で警察関係者たちが取り囲んでいる。「大変な戦いになる」とその集団を指揮する一人が言う。隊員の一人が、美術館の扉を左右に押し開ける。しか
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